大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)227 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人平井豊太郎の上告趣意書は「原判決ハ被告人ガa町b番地A方マデ拳銃一

挺ヲ不法ニ所持シタト断定シ其証拠トシテ(一)被告人ノ第一審ニ於クル第一回公

判調書中ノ供述記載及(二)Aニ対スル検事ノ聴取書ヲ挙ゲテ居ラレマスガ(一)

第一審ニ於ケル第一回公判調書中ノ被告人ノ供述記載トイフノハ本件記録第一〇六

丁七行目以下ニ、問ピストルハ何処デ受取ツタカ、答cノ地下鉄デ受取リマシタ、

問ソレカラドウシタカ、答ソレカラワカレテピストルヲ持ツテ兄ノ家ニ行キマシタ、

問兄ノ家ハ何処カ、答a町b番地デアリマストアルノヲ指スモト思ハレマスガ(イ)

被告人ハcノ地下鉄デ誰トモ別レテイマセン寧ロB(C)Aト皆一諾ニ出掛ケタノ

デス又(ロ)a町b番地ニハ被告人ノ兄ハ居リマセンAノ供述ニ依リマスト同所ニ

ハAノ兄ガ居ルラシイデスガ(記録一〇三丁)Aト被告人トハ兄弟デナイノデスカ

ラAノ兄ハ被告人ノ兄トハ申サレマセン、(ハ)原審判決自体モ「a町b番地A方

マデ云々所持シタ」トアリマシテa町b番地ニハAガ居ツテ被告人ノ兄ガ居ルコト

ヲ認メテ居リマセン右ノヨウナ誤ノ多イ点カラ見テ第一審ニ於ケル第一回公判調書

中ノ同供述記載ナルモノハ甚ダ杜撰デ信用デキナイモノデアリマス次ニ(ニ)Aニ

対スル検事ノ聴取書デスガ由来検事ノ聴取書ナルモノハ拘束サレテ味方ト思ハレル

者ノ居ナイ所デ身心共ニ疲レ果テタ者ガ強力ナ権力ヲ持ツ優位ナ者カラ威圧少クト

モ一種ノ圧迫ヲ感ジナガラ供述シタモノノ録取書デアリマシテ此レヲ過信スルト時

ニ誤判ヲ生ジル虞レノアルモノデアリマス故ニ検事ノ聴取書ナルモノニ証拠ガアル

場合ニ参考的ニ附加採用スル程度ノモノデアリタイノデアリマス以上述ベマシタ通

リ原審ノ挙ゲラレタ証拠ハ或ハ杜撰デ信用デキナイモノ又ハ単ニ参考的ニ附加シテ

ノミ証拠トシテ採用デキル程度ノモノノミデアリマス然ルニ右判示事実ニ就テハ(

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一)被告人ハ原審公判デ左ノ通リ強ク否認シテ居リマス(イ)私ハ拳銃ヲ持ツテ歩

イタコトハアリマセン(記録二五五丁)(ロ)ソレハ私ノ持ツテ行ツタノデハナク

cデBカラAガ受取リ同人ガ現場マデ持ツテ行ツタノデス(記録二五六丁)(ハ)

拳銃ハAトBガ一挺ヅツ持参シマシタ(記録二五七丁)(ニ)然シソレハ間違ヒデ

スAガCカラ受取ツテ持参シタノデス……見タコトハアリマスガ持ツタコトハアリ

マセン(記録二五七丁)ニ其ノ他記録中拳銃ニツイテ記載ノアルモノデモ左ノ通リ

大部分ハ被告人ガ拳銃ヲ持ツテ居ルコトニ言及シテハイナイノデアリマス(イ)逮

捕手続書……C、Aノ二名ハ各々拳銃ヲ所持シ……(記録七丁)(ロ)警部補D訊

問調書……私(A)ガBト各一挺ヅツ拳銃ヲ持ツテ……行キ云々(記録一二丁)(

ハ)事件送致書……拳銃各一挺宛携帯セル前記両名(A)ト共ニ……(ニ)逮捕手

続書(六月一日附)……ACノ両名ハ拳銃ヲ各々所持シ……(ホ)警部補訊問調書

(六月三日)……BトAガ一挺ヅツ拳銃ヲ持ツテ……従ツテ吾人ノ実験則カラ申シ

マスト被告人が原審公判廷デ否認シタ前記ノ供述ヲ採用スベキガ至当デアリマスノ

ニ之ニ反シタ採証ヲ為シ事実ノ認定ヲ誤ツタ原審判決ハ結局実験則ニ反シテ不法ニ

証拠ノ取捨ヲ誤ツタ違法ノ為ニ審理不尽又ハ理由不備ノ違法ニ陥ツタモノトイフベ

ク倒底破段ヲ免レナイモノト信ジマス」と云うのである。

しかしながら同一の事実に付いて相互に矛盾する数個の証拠がある場合には、事

実審裁判所はその自由な心証に従つて、そのうち何れが真実に符合するかを判断し

て取捨選択することができるのであつて、特定の証拠を他の証拠より優れた証明力

あるものとして他に優先して証拠に採用しなければならないことはない。したがつ

て原審が何れも適法なものである原判決挙示の各証拠を判示第一事実の認定の資料

として採用し、その措信しなかつた原審公判に於ける被告人の供述を証拠に採用し

なかつた点に実験則に反するところはない。また原判決がその第一事実中で被告人

が拳銃一挺を所持した場所をa町b番地A方迄と判示したのは、もつぱらその証拠

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説明に挙示するAに対する検事の聴取書に拠つたものであることは原判文上まこと

に明瞭であるから、この点についても原判決に所論のような違法はない。論旨は結

局、徒に原審の証拠の取捨を非難し、原審が措信しなかつた証拠を根拠として事実

の認定を攻撃するものに外ならないから、適法な上告理由とならない。

仍て本件上告を棄却すべきものとして、刑事訴訟法第四百四十六条に則り主文の

通り判決する。

この判決は全裁判官の一致した意見である。

検察官 柳川真文関与

昭和二十三年六月十九日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 塚 崎 直 義

裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

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